嘘をもうひとつだけ(短編集)

◆せつなさ、哀しさ:★☆☆☆☆
◆登場人物の魅力 :★☆☆☆☆
◆恋愛描写    :☆☆☆☆☆
◆緊張感     :★☆☆☆☆
◆恐怖度     :★☆☆☆☆

◆おすすめ度   :★★★★

【あらすじ】

 加賀シリーズ5編の短編集。1編わすれました。
「嘘をもうひとつだけ」元バレリーナの殺人トリックを暴く話。「眠りの森」の後の話らしいです。結局あの恋はだめだったのかな…。
「冷たい灼熱」パチンコにはまって赤ちゃんを死なせた主婦が夫の前で狂言強盗を演じ、それを見破って妻を殺した夫が、加賀の前で狂言強盗を演じる…。狂言の狂言、という話です。
「第二の希望」体操選手になれなかった女が離婚してまで、娘に夢を託す。しかし、離婚後にできた恋人が殺されてしまう。犯人は…。
「友の助言」加賀の友人が交通事故を起こして入院する。加賀は事故じゃなく殺人未遂であることを見抜いて忠告するが…。

【感想】 

 どれもこれもレベルの高い短編集。加賀のキャラは薄くなっているけれど、まあ、短編だからいいでしょう。でも、子供に対する加賀の優しさが垣間見えるようになっています。
 私が印象に残っているのは「冷たい灼熱」。パチンコ、という言葉を一度も使っていないのがすごい。
 赤ちゃんはなぜ死んだのか?夫を逆上させた妻の行為が徐々に明らかになっていきます。キーワードは「妻の髪についた煙草の匂い」「煌々としたネオン」「駐車場」「車のエアコンを加賀が切ってしばらく…『暑いですね、大人でさえつらいのに』という言葉」「『あれだけ社会問題になっていることをあの女(妻)がやらかすなんて…』の夫の言葉」。
 この問題に対する東野氏の風刺が感じられます。夫婦仲が歪んでいく過程や理由もうかがえるようになっていて、他人事じゃないな、と感じさせられます。短編ランキングで上位に入れたいほどの傑作です。