| 【あらすじ】
北島早苗はホスピスで働く精神科医。彼女の恋人の高梨は、アマゾン調査隊に参加し、帰国後には人格が変貌していた。その後、「天使の囀り」が聞こえる、と言い出し、自殺してしまう。また、「地球の子供たち」なるHPのオフ会に参加した人物らも、「天使の囀り」が聞こえはじめ、それぞれ変貌していった…
【感想】
これは、精神的に弱い人だと読まない方がいいでしょう(本気で)。しかも長篇。私も、後半には読むのがつらくなって(というかショックを受けて)顔をそむけました。そして、こわごわ読みましたが、気持ちはすっかり鬱になってしまいました。
人間が人間じゃなくなるんだな、と読んでいない人でも察しがつくとは思いますが…。これはちょっと重すぎました。読むのにかなり覚悟が要ると思います。
でも、オタクの描写がやっぱり見事でした。ゲームの中の女の子を本気で愛してしまい、現実逃避している男をよくここまで描けたな、って本当に感心します。
「眠りにつくことで、自分のいる現実から離れたい」「自分がこんな風になったのはすべて周りが悪いんだ」「サオリちゃん(恋愛シュミレーションゲームのヒロイン)だけをこの世で唯一愛している」「こんなすばらしい曲(恋愛SLG「天使が丘ハイスクール」のテーマソング)がなんでヒットチャートに入らないんだ」
…特に、「なんでヒットチャートに入らないんだ」という考え方が「こういう人っているよね」と面白がりながら読みました。ヒットチャートって、大勢に受け入れられるからランキングに入るのであり、大勢に受け入れられない曲は結局、個人が良いと思っているに過ぎないんですよね。自分が良いと思っても、他の人が同じように思うとは限らない。だから、「自分はこれが好き」と紹介することは出来ても、「これを好きになれ」って人に価値観を押し付けちゃいけないのです。でも、オタクの世界には一部、自分の価値観を押し付ける人間もいます。貴志先生はそんな人間も分析していると思います。
話がちょっとそれましたが、ストーリーにギリシャ神話とかをうまく絡ませているところが面白かったです。早苗が持っているハンドバッグが「エルメス」で良かったな、と思ってしまいました。グッチ、プラダ、ヴィトンとかは街で目にする回数が多いため、小説にまで出てきたら、「もういいよ」と思うので。女性用雑貨、宝飾品とかまでちゃんと理解して描く丁寧さがよい。
【好きな場面】
▼信一が常にサオリちゃんのことを考えている場面
やっぱり、このあたりの描写が丁寧で面白いので。
▼オフ会の場面
脇役の人生でも、しっかり丁寧に作られているので、よみどころとなっていると思います。
▼早苗が少年を安楽死させる場面
早苗の行為が正しいとは言えないけど、あれほど憎んだブラジル線虫を少年の安楽死に使用した理由については考えさせられます。
【映画化について】
この作品は映画化されていません。クリムゾンと同じ理由で、たぶん無理でしょう。
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