| 【あらすじ】
主人公の朔太郎は、中学二年生の時に、美少女・アキと一緒のクラスになった。アキと二人で学級委員を務めたりして親密になっていく中、恋におちていく。高校生になった二人は、恋人として付き合うようになっていた。
高校二年生になったアキは、白血病に罹ってしまう。修学旅行先はオーストラリアだったが、アキは行けなかった。季節が冬に近づくにつれて、日毎に弱っていくアキ。朔太郎は、アキをオーストラリアにつれていくべく、祖父に金を借りて病院から二人で脱走を計画する…
【作品の知名度】
文芸ランキング・10週連続1位(2003年8月5日現在)。私が駅前の本屋で買おうとしたときは、一冊しか残っていませんでした。売り切れ寸前でした。
【感想】
「泣きながら一気に読みました」。帯にはそんなコメントが載っていました。
しかし、正直言うと、私はそんなに号泣しませんでした。「泣きそうになった」くらいで。いまいち朔太郎に感情移入できなかったのかなあ…。いや、これは私の感想なので、「万人が泣くわけではない」と言ってるわけじゃないです。私には、泣き所のツボが合わなかったのかな、と。
物語は、朔太郎がアキの骨をオーストラリアで撒く場面からはじまります。アキと出会って付き合い、アキが発病し、病気が進行する過程と、アキとの想い出の回想シーンと交互に描かれていきます。「小説としては、今まで読んだことのない進行の仕方だな」と感じました。
朔太郎は、私にははじめは理屈っぽい男の子に見えました。しかも、アキに「愛に生きよう」「愛することを発見した人は、ノーベル賞の発見よりもすごいことだ」と語るのがちょっと苦手だなあ、と思って退きました。もちろん、読み進むうちに話に入りこめていけたのですが。
若い女性のアンケートでは、泣けるシーンは、朔太郎が空港で搭乗手続きするとき、アキが倒れてしまうシーンで「あれもこれも間に合わなかった。アキと結婚することも、二人の子供をつくることも。そして最後の、たった一つ残された夢も、あと少しのところで手遅れになってしまいそうだった。」「助けてください、アキを助けてください、ぼくたちをここから救い出してください…」のあたりだそうです。
でも、私はアキが亡くなったあとの、朔太郎とその祖父の会話のシーンでじわっと涙が出ました。「人生は美しいものだよ」「実現しなかったことは、胸の中で育まれる。夢とか憧れはそうしたものだ。人生の美しさは、それによって担われているのではないか」「死んだ人に対して抱く感情は、哀しみ、後悔、同情…でもどれも悪い感情じゃない。大切な人の死は、我々を善良な人間にしてくれる」という言葉に、もし自分の大切な人が亡くなったらと仮想したときの自分の気持ち、自分が亡くなったときの大切な人の気持ちを重ねて想いました。
この作品は、「恋愛小説」というよりも「哲学書」に近いな、と私は思いました。
「哲学」は「考えること」に等しく、「考えること」には結論がないから、哲学は答えの無い学問なのだとまさに思います。私は学生の頃、哲学に非常に興味を持っていました。一方で、「結論の出ないこと」を追い求めることに虚しさを感じたときがありました。しかし、今は確信しています。「考えること自体に意味があるのだ」と。
「好きな人を亡くすことは、なぜ辛いのだろうか」このテーマについて、じっくり考えてみてはいかがでしょうか。
|