十三番目の人格ーISOLAー

[出版社]角川書店
[定価] 660円(文庫)
[発売日]1996年4月25日

 ◆おすすめ度   :★★★☆☆

 ◆せつなさ、哀しさ:★☆☆☆☆
 ◆登場人物の魅力 :★★☆☆☆
 ◆恋愛描写    :★★★☆☆
 ◆緊張感     :★★☆☆☆
 ◆恐怖度     :★★★☆☆

【あらすじ】

賀茂由香里は、人の心を読めるエンパスだった。そのためにノイローゼ状態になり、理解の無い家族と縁を切って、風俗店で働きながらも独りで生きてきたが、阪神・淡路大震災後、休暇をとって神戸へボランティアにやってきた。エンパスの力を利用して被災者の心のケアをしていた彼女は、森谷千尋という多重人格障害の少女に出会う。その人格たちを統合するべく、由香里は複数の人格と会話をするようになるが、十三番目に出現した人格「ISOLA」は邪悪かつ恐ろしい人格であることが判明した…

【感想】 

 貴志祐介氏のデビュー作。なのに阪神・淡路大震災でのボランティアの描写とエンパスの描写をうまくかけ合わせたり、雨月物語を絡めて、多重人格障害を統合するための葛藤や人格がもたらす恐怖をくわしく描いたりと、いくつもの読みどころを存在させるあたりは、「ただの新人ではない」と読み手を感心させてしまう力があると思いました。
 TBSのニュース番組で、多重人格障害の少女がモザイクつきで紹介されているのを見ましたが、本当に突然に、大人の人格から赤ん坊の人格まで、変化してしまうんだな、と感じました。家族としてはいくら毎日一緒に生活していても、対応するのはとてもつらいんだろうな、と思います。その番組は人格障害の情報を伝えているだけでなく、「親の虐待が生み出した悲劇」という警鐘を視聴者に向けて鳴らしていました。
 また、エンパスについてですが、他人の強い感情が聞こえてきてしまうのだから、「サトラレ」の逆バージョンともいえるでしょう。しかし、だからといってこの作品はSF・ファンタジーのような描き方はしていなくて、現実的で冷静な作品になってます。奇抜なストーリ−展開をしていないので、すんなり話に入っていけました。
 キーワードがアイソレーションタンクであるということも、納得できました。ただ、終わり方が救いようがない上に、少し強引だったのでは?という不満もあります。人格統合にあれだけ尽力し、磯良(ISOLA)は消えたのに、磯良の邪悪性が残り、それが他の人格に感染してしまうなんて。千尋自身にはには罪がないのに、千尋が生きている限り、解決しなくなってしまったわけです。「この先どうするんだー!!」てなことになりますよね(苦笑)映画通り、ハッピーエンドの方が良かったのに…と少し思いました。

【映画化について】

 映画は見ました。が…おもしろかったかというとちょっと…(苦笑)まあ、怖くはなかったし、貴志先生も出演してたし、良かったのかな。貴志先生は「自分はミーハーなところがある」とラジオでおっしゃっていましたが、木村佳乃に会えたのが嬉しかったそうで(笑)木村さんの写真撮ってポスターにして部屋に貼ってる、と話していました。
 私が黒澤優を見たのはこの映画がはじめてでした。黒澤明監督のお孫さんです。