青の炎

[出版社]角川書店
[定価] 1400円(ハードカバー)
[発売日]1999年10月30日

 ◆おすすめ度   :★★★★★

 ◆せつなさ、哀しさ:★★★★★
 ◆登場人物の魅力 :★★★★★
 ◆恋愛描写    :★★★★★
 ◆緊張感     :★★☆☆☆
 ◆恐怖度     :☆☆☆☆☆

【あらすじ】

「こんなにもせつない殺人者がかつていただろうか」
 17歳の少年、秀一は愛する母と妹を守るために義理の父親を周到な計画にもとづいて殺害します。そのためには、ガールフレンドの紀子さえも利用してしまうのですが、秀一は自分が紀子を愛していることに気づきはじめます。そして、彼は「紀子を愛する資格がない」という思いと「自分が殺人者だ」という一生忘れられない事実に苦しんでいきます……

【感想】 

 貴志祐介氏の作品の中では、もっとも大好きな本です。貴志先生のことを絶対に「ホラー作家」だなんて思ってほしくないです。ホラーよりも、こういう青春ミステリーが私は一番好きです。
 はじめ、本屋で見つけたのですが、帯にひかれて立ち読みしてしまいました。私は最後を先に読んでしまう、悪い癖があるのですが、読んでボロボロ泣いてしまいました。
 そんなわけで、文庫化されてないこの本を、なんのためらいもなく買って帰りました。1400円即決です。
 そして、本を読むうちに、私は秀一に惹かれていきました。
 で、秀一のしたことは確かに間違っていることなんですけど、それでも「秀一は悪くない」と思ってしまうのです。
 曾根のような人間ってやっぱりクズなわけで。子供だった秀一を虐待し、働かずに酒とギャンブルと暴力の日々。そういう人間って私は一番嫌いです。だから、秀一の気持ちってすごくわかる。貴志先生のすごいところは、読む人に共感させてしまうところだと思います。
 この本って、「なんでそんなに高校生の気持ちがわかるの?」と驚きの連続なんです。高校生の描写が本物っぽいんです。セリフの言葉遣いとか、心の描写とか、それは貴志先生の取材の賜物だと思うんですけど、ここまで書ける作家ってそうはいない、と大絶賛しております。
 貴志先生の小説は読むと日本語の勉強になります。表現が適切で、読みやすいんです。それでいて、難しい言葉も適度にあるので、文章を書くのが上手くなるかも。下手な俗語がなくて、きれいな日本語で書かれていて、本当にいいと思います。

【好きな場面】

▼秀一が遥香に勉強を教える場面
 この教え方がとてもうまいのです。「こんなお兄ちゃんいたらなあ」なんて考えました。日本の学校教育の欠陥を、貴志先生なりの見解でストーリーの中に織り込ませてあっていい感じです。

▼秀一と紀子の場面
 秀一と紀子の愛情が伝わり過ぎて、本を読んでいない時でも頭を離れませんでした。「真っ白な壁に付いた黒い染みのようにずっと同じ場所に存在しつづけていた」という表現がまた、上手いな、と私を唸らせました。

▼秀一が紀子にお別れを言い、「愛していない」と言ってしまう場面
 「人がどんなにやりきれない気持ちでいるときも、空は一点の曇りもなく晴れわたっている」の一文が私の心に突き刺さりました。

【エピソード】

 秀一と紀子がデートする場面で、「龍恋の鐘」という鐘が登場します。江ノ島に実在していて、鎌倉へ遊びに行った際、見に行きました。鐘楼の案内板も小説通りです。ただ、感激はしたのですが、カップルの落書きだらけで汚くて興ざめした思い出があります。

【映画化について】

 2003年春、映画になるんだそうです。出演は、嵐の二宮と松浦亜弥。
 映画化に関しては賛否両論ありますが、私は、この映画がきっかけでこの作品が多くの人に知られるのですから、大賛成です。
 実はこの作品を読んで以来、「映画かドラマになればいいのにな」とずっと思ってきました。だから、この映画化の記者会見をテレビで見て、大歓喜したものです。