| 【あらすじ】
時は明治時代。日本人の詐欺師、伊沢修(いざわしゅう)は上海の刑務所に拘束されていた。詐欺事件で失敗し、警察に捕まったのだ。
さらに、詐欺で騙された男が伊沢に恨みを抱き、暗殺者を伊沢に放ってきた。だが、暗殺者が伊沢を殺そうとした時、伊沢は同じ刑務所で同室になった、関虎飛(グァンフーフェイ)という中国人の大男に助けられた。実は関は中国革命同盟会の幹部で、囚人のふりをして伊沢に近づいてきたのだ。
「中国で革命を起こすために、武器が必要だ。そのために君の詐欺の才能が必要なんだ。一緒に日本へ行って、日本陸軍から武器を騙し取ってくれ。」それが関の狙いだった。
「俺はもう革命に手を出す気はない。日本へなんか行きたくないさ。」…伊沢もかつて、革命に胸を熱くしたときがあった。だが、そのために同じ日本人に騙され、ロシア人の仲間を死なせてしまったという悲しい過去を引きずっていた。
「俺は君をあの暗殺者から守ってやる。その交換条件として私と日本へ行くんだ。」という強引な契約を経て、渋々伊沢は関に協力する。
こうして、伊沢たちは同じ詐欺仲間で、中国人の陳思平(チエンスピン)、朝鮮人のパク・チャン・イクも連れて日本へ向かった。
日本陸軍参謀次長、東正信から武器を奪い、中国へ送るために。
【感想】
この作品、最高です!読んでよかった!!私にとっては、革命なんて、意味のわからないものでした。なぜ、この時代の中国人は孫文の言葉に影響されて、死に急いでまで革命に走るのか。それは、この時代の皇帝がひどかったから。この時代の、中国の貧富の差や食料事情などは今の北朝鮮にも共通するところがあります。だから、理解できたのかもしれません。
それに、ただの時代小説じゃないんです。詐欺をしていく過程、どうやって作戦を練って、どう演技して、どう騙すのか。そのあたりも面白かったんです。最後の方は、読者まで騙されていくっていうのが、「やられたな」と感じました。
本当に、最後は誰が裏切るかわからない、騙されてないって思っていても、騙されてしまったり、裏切っているように見えても実は演技だったり…なんてことの繰り返しで、頭は混乱しまくりです。でも、最後はちゃんと一本の糸でつながっていて、「なるほどな」「確かにあの時、あの人はこう言ったよね。あれがこの結果なんだ」と納得していくわけなんです。いくつもの伏線が張られているってわけなんですね。
こんな物語だと、登場人物の誰もが「心ない人間」なのかと思えてしまいますね。実はそうではありません。詐欺仲間には友情も生まれていくし。伊沢のことは、はじめはただのペテン師だと思ってました。でも、この伊沢って男、けっこう好きになりました。
伊沢にはいろいろなエピソードが登場します。たとえば、「中国の貧しい地区に学校を建ててあげたい」と言って、日本人の子爵から金を騙し取ろうとするのですが、伊沢は本当に学校を建ててしまいました。もちろん、伊沢たちには何の利益もありません。陳やパクには「最低の仕事だ」と言われてしまうのですが、伊沢は「あの子供たちが将来、俺たちのカモになるのさ」と言いわけするのです。
ドイツでは、新橋芸者の一行を助けてあげています。海外で芸者を知ってもらおうと、旅をしていたのですが、そのスポンサーに騙され、無一文になってしまった芸者がいました。それが喜春姐さんです。伊沢がドイツ人のスポンサーをいかさまポーカーに誘い込み、巻き上げたお金を喜春姐さんに渡すのです。それ以来、喜春姐さんは伊沢が来ると家に泊めてあげることにしたわけです。
そんな素敵な伊沢を映画では織田裕二が演じていました。
理解しにくいと感じるところは中国政府の清王朝とか、日本陸軍とか、明治維新とかの話になるところです。歴史がどうも苦手で…だから、きっと難しい話なのかな、と思っていました、しかし、読みやすいように物語中で解説されています。歴史がわからなくても、「日本が朝鮮を支配したんだな」「このころの中国は欧米や日本の言いなりだったんだな」「だから朝鮮人は日本を恨んでいるんだ」こんなふうに話が見えてくると、武器を狙う人たちの動機も見えてきたりして、とてもわかりやすいんですよ。だから、私としては、かなり親切に書かれた小説だな、と思います。
ぜひ、他の人にも読んでほしいです!この作品、ジャンルとしては、何に入るのかはわからないですが、「上海痛快活劇」っていう映画のキャッチコピーは妥当だと思います。(舞台は主に上海ではなく、日本なのですが…)
【印象深い場面】
▼喜春姐さんの飼い犬、武丸が嫉妬する場面
ここは笑えました。自分の家にいきなり他の犬(それもシェパード。武丸は秋田犬。)がやってきて、武丸は面白くないんです。もちろん、伊沢が詐欺のために調達してきた犬なのですが。
「いったいどんな犬なんだ?顔を見せろ、…おまえか、おまえか、おまえか!!ぶつかってやる。咬んでやる。吠えてやる。」という武丸の心の叫び。シェパードに向かっていこうとした武丸は逆に吠えられ、びびってしまう、というオチがまた…(苦笑)
▼陳が爆死してしまう場面
ここは泣きました。電車の中で、涙ぼろぼろです。「中国が働けば暮らしていける国だったら、詐欺師になんかならなかったかもしれない。」陳はそんなことを考えていました。でも、革命のために武器を手に入れようと真剣になる伊沢や、陳をいつのまにか熱くさせてくれる関が好きでした。伊沢たちを裏切れない。だから、爆死させられてしまったのです。せつないです。
「あんたたちのいう革命っていうのはそんなに大事なことなのかい?死んじまって何になるのさ」と喜春姐さんがつぶやいているのがつらかったです。
▼明け方、伊沢たちが喜春姐さんの屋敷からこっそり出ていく場面
いっちまえばいいんだ。いっちまってもいいけど、お願いだから死なないでおくれ。もう二度と会えなくてもいいけど、元気でいておくれ。陳のように、あたしに哀しい思いをさせないでおくれよ。なんだい、いやだね、涙がでてきたじゃないか。…布団の中での喜春姐さんの心の声が私の胸も熱くしました。
▼関が陳に革命について語る場面
中国は貧しい。病気になっても医者にかかれず、子供たちは字も読めない。働いても生活は楽にならない。それを放っておく皇帝に国を統治する資格があるか?私たちは中国を変えたい。革命はその一歩だ。…関の言葉には、生きる時代の違う私でも共感しました。
【映画化について】
2003年、1月11日に公開されました。出演は織田裕二。
織田裕二大好きなお友達と観に行きました。
でも映画の出来は…散々でした。原作を知らないと全然楽しめない作品で、かなりがっかり。
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